過去生

 15, 2015 13:28
過去生知ったら生きていけないかも?o(;△;)o


透視能力のある人から、過去生のひとつを聞かされた。

私は、古代インドの戦国時代に生きていたようだ。

マハラジャのもとに誕生した男子で、
名前は『ヌーコンシャ(勇気ある者)』だったという。



ヌーコンシャは、生後まもなく川に流された。
マハラジャを頂点とした側室たちの陰謀に巻き込まれたらしい。

(えぇ~っ!『十戒』じゃあるまいし、作り話の感だよな……)

幸いなことに、ヌーコンシャは子供のない老夫婦に拾われ、
貧しくも大切に育てられたそうだ。


成長した彼は、いたるところの戦に出て多くの手柄を立てた。
生活に困窮する育ての親を、楽にしてやりたい一心だったそうだ。

時は流れ、老いた親が相次いで亡くなると、
ヌーコンシャの闘争心は、さらに激しいものとなった。
自らのルーツが判らない苛立ちや、
孤独感から沸き起こるハングリー精神が
立身出世を欲していたからだ。


やがてマハラジャにまで成りあがった彼は、
美しい妻をめとり、息子を授かった。
だが、幸せは続かなかったという。
お抱えの主治医と妻の陰謀によって、毒殺されたからだ。

(えぇ~っ!……それも、よくあるストーリーじゃん)

しかも息絶える前に、わが子の首を絞めて道ずれにしたそうだ。
裏切り者の主治医と妻に、
最愛の息子を託すわけにはいかなかったからだ。

いかにも作り話のようだったが、
胸の奥に“思い当たる節”があってショックだった。


『あ~あ、ものすごく落ち込む…。
実は、戦いに向かう戦士の感覚って、
今も余韻のように感じることがあって……。
けど、過去に見た戦争映画の記憶だと思い込んでて…。
そっかぁ、マハラジャになるまでに何百人も殺して、
最後にわが子まで殺したんだ…』

ため息をつきながら、私が言った。

『確かに…。けど、マハラジャになって、
あなたはその何倍もの人の命を救った』 

過去生を観るという人が、慰めるように言った。


『あの、彼を育てたお爺さんって、すごく大きな人じゃない?』

『ええ、がっしりとした大男。今も、あなたを守ってて……』

『過去生は初耳だけど、その存在もず~と感じてて。
勝手にビッグマンって呼んでて。
正直、やっぱり、って感じ……。
けど、その時代から千年以上も経つのに、
その爺ちゃん、生まれ変わることもなく、
なんだって、今も私の傍にいるの?』

『う~ん。聞いてみよかぁ……ただ、愛してるんだって。
う~ん……心配がなくなったら転生するみたい』

(すごぉ! 同時通訳できるんや!)

『ついでに殺してしまったわが子は? 父親だった私に、
どんな感情を持ってんのか聞いてみて』

『う~ん…恨んでいない。
殺した動機は悪ではないから、だって』



その夜、私は久しぶりに号泣した。

いかにも作り話のような感覚で聞いていたのに、
今も残る、医者に対する憎悪のような感情には
心当たりがあった。

医師に対する猜疑心や恐怖心は、昔から抱いていた。
子供の頃はただ、痛い思いをさせられると恐がっていたが、
大人になると、意味不明の憎悪が混じっていると気づいていた。

特権階級への羨望?
それを越した、単なるジェラシーだろうか?
そんなふうに、なんど自問自答したことだろう。
(過去生で殺されたとしたら、合点がいくというものだ。
理由もなく、ただ、医者が嫌いだもの……)


それからというもの、なぜか過去生の断片が甦るようになった。
といっても、それらはまさしくフィルムの断片で、
瞬間的に浮かんでは消える、幻のようなひとコマ映像に過ぎない。

湖畔のロッジで、向かいの山を眺めている男。
足を滑らせ、高い塔の上から落下する聖職者風の男。
雨音に耳を傾け、安らぎの死を迎える壮年の女。

いずれも、それが自分だと確信できる。
映像とともに、肉体的的な記憶が甦るからだ。

過去生の有無に対する猜疑心は、すっかり消えた。
(ありがとう、ビッグマン。
ここらで精神世界への探求心は棚上げして、学業に専念します。
鍼灸師として一人前になった頃、
あなたの存在を感じなくなるんでしょうね)


人に対する好き嫌いや、
恐怖を感じる対象などは、
過去生から感情を引きずっていることが多い。
興味深々だが、
過去生は知らない方が生きやすいかも……。
なぜって、マザー・テレサ級の魂なら別だが、
多くは傍若無人、破天荒な生き方をして、
何度も々も、無残に死んでいるようだから……。



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